平成18年3月6日午後6時より,大阪弁護士会館にて,一水若手会勉強会が開催されました。今回は,平成17年4月より「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」に基づいて,裁判官から弁護士登録された安西儀晃先生(色川法律事務所所属)及び中武由紀先生(北浜法律事務所所属),並びに平成17年10月より非常勤裁判官として大阪家庭裁判所において家事調停官を勤めておられる管勉先生をお招きして,弁護士と裁判官の職務交流について学ぶという企画でした。 安西先生は,私が修習生として大阪地方裁判所の第11刑事部に配属されていた当時,同刑事部の左陪席裁判官として,ご活躍されていた方であり,当時から,弁護士職務経験に希望を出す予定であると語っておられました。安西先生が,昨年の4月より弁護士登録されているのを見て,一度お会いしたいと思っていたところ,今回の企画が開催されるのを聞き,この機会を利用してお会いしようと思い,弁護士任官等にそれほど興味がなかった私もこの勉強会に参加させていただきました。 勉強会は,まず,安西先生と中武先生に,裁判官の弁護士職務経験に関する様々な質問にお答えいただく形式で,進行しました。裁判官の地位に戻ることを前提に,一定期間その官を離れ弁護士の職務につくとなると,一般的に興味がわくのは待遇面ですが,安西先生及び中武先生ともに,判事補時代と比較して給与は上がったものの,裁判所共済組合を継続できない等の不便な面もあるので,結局,どちらの待遇が良いとは一概には言えないとのことでありました。なお,現在,両先生とも,受入事務所の事件の他,個人事件も受任されているとのことで,安西先生は国選事件や家事事件,中武先生は国選事件や少年事件の付添人といった仕事に加えて子どもの権利委員会にも所属されているとのことでした。そのような弁護士職務経験によって,裁判官時代と比較して意識が変化した点に関し,安西先生は,国選事件の被告人から脅迫めいた言動を繰り返されるという経験をした際,刑事裁判官時代に解任して欲しいと申し入れてきた国選弁護人の気持ちが,実感として非常によく理解できたと仰っておられました(なお,安西先生は,刑事裁判官時代,そうした国選弁護人の申し入れを全て拒絶していたこともあり,自ら国選弁護人の解任申し入れ等はしなかったとのことであります。)。また,中武先生は,裁判官の訴訟指揮の方法に関連して,代理人が気持ちよく裁判官の訴訟指揮に従えるような「ものの言い方」といったものがあるのではないかと感じるようになったと仰っておられ,かかる指摘については,私も非常に共感できる点でありました。 上記のような安西先生と中武先生による裁判官の職務経験に関するお話に引き続き,管先生から,非常勤裁判官として大阪家庭裁判所において家事調停官に就任することとなった経緯,選考方法及び実際の職務についての説明がなされました。管先生によると,近畿弁護士連合会の選考にあたっては,先生ご自身が過去に作成された訴状や準備書面,また,様々な事項に関する自己評価(自らA〜Eまでのランク付けをするとのことです。)なるものも提出しなければならないとのことでした。現在,管先生は,週1回,大阪家庭裁判所に朝から詰めておられるとのことであり,「1週間のうち1日を拘束されるのは大変ではありませんか。」との質問に対し,最近になりようやくそうしたスケジュールにも慣れてきたと仰っておられました。なお,勉強会の最後に,弁護士任官に関するビデオが放映されました。このビデオは,弁護士任官がいかに素晴らしいものであるかを余すところなく伝えており,勧誘ビデオとしては,非常によくできたものでした。ただ,ビデオ放映後の感想において,弁護士任官後,退官した弁護士の雇用の問題や弁護士任官者が任官準備の過程で生じる経済的負担をどうするのかといった問題も提起され,弁護士任官といった制度に付随する未解決の問題が残存していることが指摘されました。 内外の社会経済情勢の変化に伴い,司法の果たすべき役割がより重要なものとなっている現代において,多様かつ広範な国民の要請にこたえることのできるような広くかつ高い識見を要請されているのは,裁判官と検察官だけでなく弁護士もまた同様であると思われます。私自身,この勉強会に参加して,弁護士としての職務を遂行する過程において,どのようにすれば多様で豊かな知識,経験及び人間性を備えることができるのかと柄にもなく考えさせられ,非常に有意義な時間を過ごすことができました。 最後に,若手会世話役の皆様には,有意義な勉強会を企画していただき,心より御礼申し上げます。これからも,このような有意義な企画がなされることを期待しております。 |